手術は通常点眼麻酔か前房内麻酔で行われます。代案として全身麻酔もあります。
もし術後痛みがある場合は痛み止めを使用します。
前房内麻酔は、エピネフリンや防腐剤を含まない局所麻酔・注射剤のキシロカイン® ポリアンプ1%を原液のまま0.1~0.2ml程使用しております。
外来で診察時に神経質そうな患者さんや、比較的若い患者さんには使用していますが使用頻度は2~3割です。
基本的に点眼麻酔だけでできる症例が多いです。
痛がったり、動いて危なさそうだったりする患者さんには、最初から前房内麻酔を行うか途中で追加します。アドレナリンを含有しない1%キシロカインを0.1mLもしくは0.2mL注射すると、ほとんど疼痛なしで手術が施行できます。
この方法ですと、結膜が水腫となって見難くなるということもありません。
色素がたくさんあると線維柱帯がわかりやすいです。先端のフットプレートは線維柱帯から透けて見えますが、迷入することは少ないと思います。
実際にシュレム管に挿入するときは、あまり抵抗がありません。管腔に入れて上下に動かすと、管腔の幅の部分だけ動かせます。外れると抵抗があるので、しっかり入ったということがわかります。そこで出血したことはありませんので、その奥を損害したということはないと考えています。
隅角の部分は曲面になっているので、無理矢理真横に動かすとシュレム管を損傷する可能性がありますが、手前に引くような動かし方をすれば、問題ありません。手前にカーブしていることをイメージしながら、少し引き気味で動かすとよいと思います。
実際に焼灼しているのは、隅角に入ったプレートではなく、その手前の部分です。プレートを無理矢理壁に押し付けなくても問題なく切開することができます。
眼内に残ると眼圧上昇しやすい粘弾性物質や、灌流吸引時に除去しにくい粘弾性物質は避けたほうがよいと思います。
トラベクトーム本体は再利用可能です。
しかし、電気的に切開する機器なので、先端のハンドピース、専用灌流吸引チューブはディスポーザブルとなっています。
極小切開で、レンズを入れる前までは白内障の術式を進め、トラベクトームを行い、レンズを入れる直前に創口を拡げるという方法であれば、先に白内障手術を行うことも可能です。
しかし、先にトラベクトームを行っても、出血が多くて困難だったという報告はありません。
視野障害が軽度な場合、高眼圧症で白内障がある場合は、トラベクトームを選択するとよいと思います。
緑内障の早期発見早期治療というこれからの治療戦略にトラベクトームの価値が生まれてくるでしょう。
術後点眼ですが、とくにNeoMedix社からの点眼の縛りはありませんが、リンデロンなどの強いステロイドを使用すると、術後ステロイドレスポンダーの割合が高く眼圧が上昇してきます。
アメリカではLotemaxという弱いステロイドを推奨しておりますが、日本では手に入らないので、0.02%フルメトロンを使い 1週間ほどでNSAIDsのみを使用します。
強い白内障との同時手術でフルメトロンにした際、翌日フィブリンが出て瞳孔ブロックになる恐れがあったので、最近は白内障との同時手術でとくに術直後に炎症が強くなりそうな場合はリンデロンAを使用しますが、炎症が落ち着き次第すぐに中止しています。サンピロは術後1日4回からスタートし、ひと月に1回の割合で、1日3回、1日2回、1日1回と減量し、中止している先生が多いようです。
倍率が低く暗く感じるため、フットプレート挿入時にやりにくく感じます。 慣れてくればできないことはないと思いますが初心者にはお勧めしません。
初期の症例としては、ALTやSLTの既往のないPOAGあるいは落屑緑内障例で、IOL眼、あるいは白内障同時手術の方が宜しいかと思います。
オペガンは単独手術の時に使用していただくのに宜しいかと思いますが、内容量が最も少ないもので結構です。
もし同時手術でされるならば通常使用されているものをそのままご使用していただいて宜しいかと思いますが、ヒーロンVだけは推薦いたしません。
"There has been 3 cases reported that the tip of the handpiece nicked the capsule in the database which is less than 1%. Most of the Trabectome only cases on a phakic lens is performed in a closed pupil and iris is protecting the lens. May be that is why the reported cataract formations on these cases are very minor."
と、1%以下という報告です。ただ、これはドクターが手術に関係すると判断して報告した数なので、正確かどうかはわかりませんし、術中に触ったものということですから、粘弾性物質や灌流の影響はわかりません。
トラベクトーム単独手術群よりも同時手術群のほうが術前眼圧が低いにもかかわらず、眼圧下降率が同時手術群のほうが大きいということからも、同時手術のほうが眼圧の下がりは良いようです。これまでの流出路手術(ロトミーやビスコカナロストミー、ロトミー+DS+SINなど)でも単独手術と同時手術では、同時手術のほうが眼圧下降効果が強いという報告が多い(20%程度vs30%程度)ことからも、同時手術のほうが効果はあるかと考えます。
術創口のハイドレーションにはヒーロン曲針またはニプロのヒーロン直針の使用が可能です。前房洗浄時に使用するものとしてシムコ針の代用のものがあれば結構です。
シムコ針はトラベクトーム単独手術のときは1例につき1個必要ですが、消毒が間に合えばそれ以下でも結構です。もし白内障と同時手術となれば白内障手術装置のI/Aを使用するのでシムコ針は必要ありません。
手術手順・角膜切開し、粘弾性物質を注入します。
・角膜の乾燥を防ぐため、角膜に粘弾性物質を垂らします。
・患者の頭位を術者の反対側へ傾けて、顕微鏡を手前に傾けます。
・隅角鏡(ヒルレンズ)をのせ、線維柱帯の見やすい位置を確定します。
・ハンドピースを眼内に入れ、隅角鏡(ヒルレンズ)をのせ、
線維柱帯にハンドピースの先端を刺入します。
眼内の粘弾性物質の除去
・白内障同時手術のとき:白内障手術装置の吸引灌流装置とハンドピースIA
・トラベクトーム単独手術のとき:トラベクトームの吸引灌流装置ととシムコ針IA
を使用します。
術日点眼のNSAIDはジクロード、ブロナック、二フランのどれでも可能です。 術後は、眼帯で、下方のみ剥がして、点眼してもらっています。
隅角鏡が接触せずに線維柱帯が観察できるものであればどの開瞼器でも可能です。 開瞼器を何種類か準備しておいて、問題があるようであれば手術途中で交換してください。
①問題なし
②反対側に顔を傾けるため鼻側に水が垂れ落ちます。
これだけはなかなか改善できませんのでご注意お願いします。
③一日は問題ないと思いますが、症例ごとに灌流チューブも取り換えて使用します。